鋳込み入門 一体型鋳込み石膏型の制作と鋳込み方法

陶芸

 鋳込みと言うのは皆さんご存じですね。 石膏型に、磁器土をドロドロ溶かしたものを流し込む技法です。 最近の大量生産をしている窯元ではこの鋳込みが多くなって来ています。 この技術があれば、どんな素人でも、手順さえ間違わなければ、大量に同じ磁器の素地が出来ます。 

 この記事では、一体型の石膏型をつくるのに必要な手順や留意点をステップ毎に説明します。この記事を読めば簡単な鋳込み石膏型が作れ、磁器の作品が沢山作れるようになります。

一体型鋳込み成型の作品

鋳込みの種類と手順

 鋳込みには大きく分けて、通常の鋳込みと圧力鋳込みがあります。通常の鋳込みは石膏型にドロドロの泥漿を流し込んで成型。厚みは流し込んでから、泥漿を流し出す時間によって決まります。

 もう一つの方法が”圧力鋳込み”。文字通り、泥漿を流し込んでやって圧力をかけて、石膏型の隙間で成型が出来る方法です。下の写真で分かりますように、円錐台のプラスチック容器に泥漿を入れることで圧力がかかります。

 型はお皿を例に挙げれば、石膏型にはお皿そのものの隙間があり、それが上、下二つの型で作られます。圧力が掛けられて、その隙間が泥漿で埋められます。そして、泥漿の水分は石膏に吸い込まれて硬くなって行きます。水分が減った分、圧力で泥漿が供給されますので、その隙間(お皿の形の空洞)で成型されると言う仕掛けです。

圧力鋳込み 泥漿の重さで圧を掛けてます。

この圧力鋳込みも大量生産になると、型が複数段積みされ、機械で泥漿に圧力が加えられます。大量生産は、専門業者に任せて、この記事は陶芸愛好家の為に小規模のものを紹介します。

 型は形状に応じて、複数に分解するものもあります。この記事では入門と言う事で、一体型の作成をベースに説明を進めます。

鋳込み原形製作手順

鋳込み型の制作手順
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    作品の図面作成

    最初はシンプルな形でやります。蕎麦猪口、カップ、タンブラーなど。

    型を抜く方向を考えて、逆テーパーが無い事。

    最終焼き上がり寸法に収縮率を加味した作図をします。(縦15%横 17%)

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    粘土原形つくり

    設計図の原形を粘土で作ります。厚みは少なくとも20mm。空洞なしでも可。

    削りを考慮して少し大き目に作ります。削った後が20mm厚です。

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    削り仕上げ

    半乾燥したら、削ります。この原形通りに仕上がりますので大事な作業です。

    傷や段差が無き用綺麗に仕上げます。

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    半乾燥

    少し乾燥させます。乾燥が早い場合はナイロン袋に入れておく。完全乾燥不可。

Step I 作品の構想と設計

   良い作品作りはやはり構想としっかりした設計が必要です。その際の留意すべき点は以下の通りです。

設計上の留意点
  • デザインを考え、図面を起こす。一体型の場合は、鋳込まれた作品が逆テーパにならない事が肝要です。少しでも、逆テーパーになると鋳込まれた作品が外れません。
  • 土の収縮率を考慮した寸法にする。土の種類によって収縮率は違いますが、鋳込みに磁器土の泥漿を使いとした場合、縦方向が15%、横方向が17%を目安に設計をします。
  • 鋳込みであっても軽く削り仕上げをします。それも考慮しておきます。

Step II 原形作りと削り仕上げ

 原形は、粘土で作ります。設計した図面より、高さ、大きさも大き目に電動轆轤で作陶します。原形は中を空洞にする必要はありません。空洞にしたいのであれば、最低、20mmの厚みにします。 

 数日放置し、ゆっくり半乾燥させます。その後が削りになります。この作品のように背が高く、側面が直線(台形)の直線的に削ってやる必要があります。どべ受けの削りカスを見て下さい。これだけ大量に削ってます。電動轆轤であっても、非常に難しいでしょう。 ですから、最初は、少し小物の作品がやり易いでしょう。

 高台は付けてもつけなくても大丈夫ですが、高台を付けるとその分内側に溝が出来ますので、それがNGであれば高台なしにするか、圧力鋳込みの型を作ります。

 繰り返しになりますが、石膏型は上に抜きますので、部分的に逆テーパーにならないようにします。

STEP III 原形の石膏型取り

準備物: 焼石膏(必ず、この焼石膏を使います。)、塩ビシート、透明テープ、粘土

     洗面器、丸棒、ステンレス容器等、量り

石膏型の制作手順
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    原形の内側に粘土を詰める(空洞があれば)

    原形の内側に粘土を詰めて空間を少なくします。石膏が流し込まれた時に、原形が浮かぶのを防ぎます。 

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    手回し轆轤に原形を据える

    原形の口縁と、轆轤盤面をスポンジで軽く濡らします。逆さまに載せて、軽く前後に動かすと、どべで、原形が轆轤面に接着されます。

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    石膏型の壁を作る。

    後述

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    必要石膏量の算出

    後述

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    石膏を流し込むタイトル
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    硬化、型枠外し、成型
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    乾燥

 

 石膏型は、各部分、30mmの厚みが必要です。この厚みがないと、石膏が泥漿の水分を吸いこまないようになります。直径が9cmであれば、+6cmで、塩ビシートで、直径15cmの筒を作ります。

 塩ビシートが石膏の壁になります。下は太目の粘土紐を巻き石膏の流出を防ぎます。

 下の写真の空間が石膏が入るところで、これ位の厚みがないと、同じ型で沢山の鋳込みは出来ません。 

継ぎ目を、セロテープで、上下と中間を外側から貼ります。

 作った塩ビシートの筒を載せます。直径5cm程度の粘土紐を塩ビシート外側に貼り、内側から押して塩ビシートと轆轤に密着させます。 

石膏の必要容積計算

 塩ビシート円筒と原形の体積を計算します。 塩ビシートの体積から、原形の体積を引いたものが石膏の量です。原形の上部から、30mmの石膏が必要です。(原形の高さ + 30mm)

 石膏は、水の量に対して、120%を準備します。計算された体積から、2000立方cm=水 2000ccとして、石膏の粉は2400グラム。

石膏の準備手順
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    水と石膏の必要量を体積から計算

    水 2000cc 石膏 2400g

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    石膏の準備

    石膏袋の中の粉を攪拌しサラサラにして、2400グラムを別容器に取り分けます。

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    水に石膏を振掛け投入

    ステンレスの容器に2000ccの水を入れ、石膏をふりかけます。一度に投入すると、だまが出来たり、空気が入り込みます。

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    石膏攪拌

    石膏の投入が終わったら、丸い木や竹の棒で攪拌します。角棒は泡立ち空気が入ります。石膏の状態で違いますが、3~5分程度で、石膏が化学反応を始めます。  攪拌している棒が少し重たくなります。(微妙な感覚です)

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    石膏を素早く投入

    少し、重くなったなと感じたら、即座に素早く石膏を投入します。時間を掛け過ぎると石膏が容器の下で固まってしまいます。

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    投入が終わったら、振動を加え空気の泡を抜く

    下の轆轤などに振動を加えて、泡を上に抜きます。泡が残ると巣になります。轆轤を叩いたり、少し持ち上げて振動を加えます。人によってはバイブレータで振動を加える人もいます。

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    道具の清掃

    石膏は化学反応を起こし、硬化が始まります。30分程度で固まって行きます。その間に使った道具を水に浸けます。下水に流したら絶対ダメです。水に浸しておけば、固まったら取れます。

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    石膏の発熱と完了

    石膏の表面の水がなくなったら、指で軽く触れて確認。少し温かくなり、表面の水が無くなり、指で軽くおしてもへこまかったら完成。

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    塩ビシートを外し、軽く成型

    塩ビシートを外し、上部などを金尺などで軽く均します。まだ、柔らかいですから、ラフな成型はこのタイミングがベストです。横と下(口側)は触りません。

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    型を轆轤から外し、一週間程乾燥

    原形が付いたまま乾燥させます。乾燥で原形は縮み、石膏は逆に膨張しますので、原形が簡単に外れます。後はばり取り程度の成型で完了。

石膏型完成

 原形の粘土は乾燥で縮、石膏は逆に膨張すると言うことで、原形と石膏に隙間が出来ます。その時点で原形を型から取り外します。気温や湿度によって違いますが、焼成室の窯の近くの比較的温度が高く湿度が低いところにおいて乾燥させます。一週間程で、乾燥が進み、原形は簡単に外れます。

 石膏の外のバリなどを取って完成。後は鋳込むだけです。下のYouTubeを参考にしてください。

一体型 石膏型鋳込み YouTube

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