きっと出来るプロなみの絵付けの裏技

陶芸
染め付け 広重

 陶芸の絵付けって難しいですよね。ある程度の芸術的才能も必要で、私たちの仲間も絵付けを諦める人は多くいます。「絵心がない!絵が描けない!手が震えて難しい」などなど出来ない理由は沢山あります。でも、陶芸をやってる方で、絵付けを出来るようになりたいは是非これを読んで下さい。

Norm
Norm

こんな感じの作品はどうです。絶対、作れるようになりますよ。

左側の作品置き方が少しずれてる。これ位の絵は、だれでも書けますよ。

一寸したコツをつかめば。

  • 染め付けをやりたいけど、還元焼成が出来ない。
  • 染付は骨書きも、”だみ”も難しすぎて無理。
  • 下絵付けでは発色が悪い
  • 上絵付をやりたいけど、上絵付窯(焼成)がない

 でも、やり方を覚えればだれでもこんな絵付けが出来ます。

Nayami
Nayami

でも。やっぱり難しそうだね!

「でも難しそう」と思ってますよね。でも、少しのポイントを抑えればそんなに難しくはなくて、超簡単とは言えないかも知れないけど、いい作品が出来る事間違いありません。

Mr.Cool
Mr.Cool

いい発色。これって上絵じゃないの?

Caili
Caili

これが裏技の作品だって。

 

絵付けのいろいろな技法

絵付けの種類 (酸化焼成=OF、還元焼成=RF 英語の頭文字を取った表記)

  • 下絵付け 染付と言われる呉須で描く技法(RF, OFでは地肌が黄色く、呉須の藍色が少し黒味を帯びます)
  • 下絵付け 色呉須を使った絵絵付け 呉須は藍呉須を指しますが、最近は色呉須も沢山(o,R)
  • 上絵付  九谷など。絵具は低温度(800度)で焼成。(OF)
  • 上絵付 イングレーズ 上絵付の一種。絵付けが釉薬に溶け込んで下絵みたいになる。
  • 金彩、銀彩など。 低温度焼成(600度+)(OF 上絵付をして、さらに焼成)

ざっとこんな感じだけど、それぞれに絵具など別々に備えるひつようがあります。

一般の陶芸教室では出来ない還元焼成だの上絵付焼成など、出来ない事ばかり。でも、この方法であれ有田や九谷の色絵に近いものが出来るます。

スーパーテックニック(裏技)の種明かし

それでは、そろそろ種明かしをしましょう。この絵付けは”下絵具と釉薬による技法”なんですよ。だから、陶芸教室のレベルでも十分使える簡単な技法ですよ。そう聞くと「何んだそうなんだ。簡単そう」と思うでしょう。

絵具はモチーフに合った好きな色呉須をつかって下さい。通常は、赤、ピンク、グルーン、特グリーン そして黄色程度で十分。

釉薬は、基本的には土灰。そして、色釉も使います。

絵付けの手順と技法

 生地は出来れば磁器土。絵付けの発色はやはり磁器土の方が優れてます。でも磁器土は作陶が難しいから、信楽の白などでも大丈夫。余談ですが、この一輪挿しは磁器土の鋳込成型です。

 モチーフは清水焼の伝統的な牡丹。最初はこの様な少し大き目の絵柄が良いでしょう。これだったら少し練習したらだれでも書けます。どうして下書きが出来ないのであれば、インターネットで画像を探して、カーボン紙とトレーシングペーパーを買って来て、画像を作品に転写してください。転写紙は赤のものを売ってます。赤のものが使い易いです。

 絵を切り抜き、裏にカーボン紙を重ね。鉄筆か、硬い鉛筆で線をなぞれば転写出来ます。「どうでしょう?」 これだと絵心も要らないし、高齢者の手の震えも問題ないのでは。

 この技法で必要なのはイッチン描きです。下の写真がイッチンで描かれた牡丹です。

上の写真が、鋳込みの一輪挿し。これにイッチンで好きな絵を描きます。イッチンは陶芸ショップなどに売ってます。磁器土の細かな削りカスで泥漿を作りそれをイッチンに入れて描きます。(具体的なやり方は下のYouTubeを見てね。音楽がうるさいので、音を下げて見てね。)

Mr.Cool
Mr.Cool

画質は悪いけど、イッチン描きよく分かったわ!

ここがイッチン描きの手順と留意点

  • 絵柄は少し大き目のものを選びましょう。
  • イッチン描きは、削りが終わったまだ乾燥しきってない硬さで。乾燥し過ぎると、イッチン描きが剥がれたりしますので要注意。
  • アウトライン(イッチン描きの部分)は鉛筆で下描き。上の写真でも鉛筆線が見えまね。あくまでもあたりを取るだけです。イッチンで描く時に修正をしながら描きます。
  • そして素焼き
Mr.Cool
Mr.Cool

素焼きにはでけへんの?

  ノーマン:出来るけど、はがれやすいね。素焼きにイッチンするときは、水スプレーなどで湿気を与えて。 それから、しっかりはたきで埃を落としてやらないと後で泣きを見るよ。

基本は、生にイッチンしましょう。

イッチン描きの手順と留意点
  • ラベル
    作陶が終わり、削り作業が終わる。

     乾燥させないで、半乾きがベスト

  • ラベル
    鉛筆で下描きをする

     鉛筆は柔らかなものを使う。花などの大き目のモチーフが描き易い。モチーフの当たりを取る感じで、ああざっぱで良い。

  • ラベル
    イッチンの準備

    白化粧土は上水を除き、そこに沈殿したものを使う。硬さはマヨネーズ程度。出来れば、ガーゼを通してだまを取っておく。

    磁器土の場合は、乳鉢に水を入れる。そこに磁器土の削り粉(カスOを水の表面から出る程度入れ、一晩置き、次の日乳鉢で良く摺り、ふのりをティースプーン2杯程加える。

  • ラベル
    さ~描いて見よう!

    イッチンを使って下書きを参考に描いて行きます。描いた線が少し盛り上がる程度の硬さが良い。ぺちゃ~となるのは柔らかすぎ。線が切れ切れになるのであれば、硬すぎ。経験で覚えるしかありませんよ。

「イッチン描きかい。易しくないじゃん」と思っている方、その通りである程度の経験が要ります。❝弘法筆を選ばず❞と言う言葉がありますが、❝陶芸家は道具を選ぶ❞です。次が技、これは経験のみ。

 陶芸ショップで、プラスチック容器に口金が付いたものが販売されてます。これを購入するか、ケーキ作り用のアイシングバッグに0.5~0.7㎜位の口金を付けて自前のイッチンを作りましょう。

 イッチン描きは、花びらや葉の輪郭だけで良いです。そして、花の筋や葉脈は陶芸用の針で描きます。上の写真を見て。針で描いた葉脈が見事に浮かび上がってます。 これは、焼成で絵具が針の溝に溜まって、濃くなる為です。これをプロの絵付け以上の細い線が描けます。

『百聞一見にしかず』で、だいぶんと前に作ったYouTube動画がありますので、見て下さい。イッチン描きの何とやぞやが分かると思います。

発色を良くするための裏技 着色

素焼きが終わったら、いよいよ着色です。着色には三つの方法があります。

呉須で絵付け所謂染付と言う古来の技法ですが、もっともネックになるのが還元焼成。酸化焼成では、呉須の発色がやや黒ずみます。そして技法としては、線描き、だみなど経験と技術を要します。
下色絵具下色絵具は、近年は高温度に耐え、発色の良い絵具が販売されてます。絵具の発色そのものと釉薬の影響で鮮明度が落ちます。
下絵具/色釉薬+イッチン描きこちらが今日紹介する技法です。京都の窯元の絵付け師さんが教えてくれた技法です。    こちらが今日のテーマ!!

こちらは2番目の、下色絵具です。余談ですが、この程度の着色で十分です。下地は磁器土の鋳込み仕上げのの花入れで、陶土よりも鮮やかに発色します。この方は還元焼成で仕上げます。

Kiyo
Kiyo

下の写真の細かな葉脈はどうして描くの?

     ノーマン:いい質問だね。こんな細い線が描けたら凄いね。でも、違うんだ。

          イッチン描きをした後、陶芸針で引っ掻いて筋を入れたんだ。

          この部分に絵具や釉薬が溜まって脈が見える。裏技

この写真は通常の下絵具での着色

透明になる土灰釉で施釉。石灰透明でもいいのですが、こちらの釉薬は、縮れなどが出易いので土灰を使います。”土灰釉”と言うと”土の釉薬?”と思う人が多いですが、さにあらず。土は雑木と言ういう事なんです。

それでは今日の裏技をタイムラインで説明します。

裏技の作業手順

写真が少しピンボケですが、この方が説明しやすいので。

花びら⇒ピンクの下絵具

  • 花びら⇒下色ピンク色絵具、赤い花びらであれば、赤の下絵具
  • 花芯⇒ レモン釉、又は、黄の下絵具
  • 葉っぱ⇒織部釉
  • 枝⇒  飴釉、

これはあくまでも例ですが、自分の配色に応じて、下絵具と色釉の使い分けをします。

装飾の手順
  • ラベル
    下絵具と土灰釉の準備

    土灰は湯のみ一杯程度

    下絵具は液体の絵具が扱いやすい。

  • ラベル
    色釉の調合

    絵付け皿に土灰釉を注ぎます。そして、それに下絵具を少しいれます。その分量は、メーカーや色によって変わります。目安としては、土灰釉が少し色ずく程度で、出来れば事前にテストピースで発色を確認します。

  • ラベル
    素焼きの施釉

    土灰釉で施釉して、高台、釉だれ、ピンホールなど修正します。

  • ラベル
    着色

    イッチン描きの線に沿って、花びら、花芯、葉っぱ、枝などを筆で着色して行きます。釉薬は、当然酸化焼成用のものを準備します。

  • ラベル
    本焼き

    これで完成です。もし、色の薄い部分が有ったら、もう一度塗り直して、再度本焼きをすることで出来ます。

  • ラベル
    調合釉薬の保存

    余った釉薬(土灰に色呉須を調合したもの)は百均の小さなプラスチック容器naどに保存します。 

調合された下絵具(下絵具+土灰)で、それぞれの部分を筆塗りします。葉っぱは緑の織部、茶は飴釉、黄色の檸檬釉を筆塗りします。なぜイッチン描きをしているか分かりますね。施釉してもイッチンの線は出ますから、これがないとどこに色を塗ったら分からなくなります。そして、もう一つのメリットは、絵にメリハリがでます。

まとめ

  • この技法は、いろんな装飾にも応用できます。下絵具で着色して釉薬と組み合わせることも。
  • そしてなによりも、イッチン描きで絵付けに迫力が出ること間違いなしです。私たちは、染めつけでも、下絵をイッチン描きして素焼き。そして、藍呉須で仕上げたりまします。
  • このイッチン描きを覚えれば、あなたの作品のレベルが格段に向上するでしょう。
  • 最後にもう一つのメリット。上絵付でも多分出来るでしょうが、この方法であれば、酸化焼成一回で済みます。又、上絵付は、鉛等の問題がありますので、この方法であれば、基本的には下絵付けですのでその心配が不要です。
  • 最後に下絵具ですが質の良い絵具を使いましょう。窯元では、有田の岸川絵具の液体呉須を使ってます。これは是非ともお勧めします。⇒岸川絵具店リンク
Norm
Norm

最後まで、読んで頂いて有難うございます。

 絵付けには色んな技法があるから、いろいろと試してみて下さい。

絵心がないなんてあり得ない。冒頭の広重の絵付けなんか、インターネットで探して、絵を印刷。お皿のサイズに拡大・縮小して下にカーボンペーパーを敷いて転写しただけです。これだったら、誰でも出来る。

 でも、染付は骨書きと”だみ”は練習が必要だね。でも、ノーマンが出来るのなら誰でも出来るんじゃない。

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